武器は弛まぬ工夫

日本語によるにラップについての思い付き、感想、受け売りのうろ覚え知識を書いていくブログです

モーラとシラブル 韻の長さ

問題
「立体感」と「失敗談」
「取り巻き」と「良し悪し」
どっちの韻の方が長い?

答え

長さの数え方による

 

  

ラップの「上手い下手」を決める基準は人によって異なりますし一概には言えませんが、「押韻の巧みさ」は少なくともたくさんあるモノサシのうちの一つくらいにはなるでしょう。ではその「巧みさ」は何によって決まるのかと聞かれると、これもまた一概には言えません。

  • 韻を踏む回数の多さ
  • 韻の配置のリズミカルさ
  • 聴き手に「韻を踏むために無理やり作った文章」と感じさせない自然さ

色々ありますが、これらと並んで注目されることがあるのが

  • 韻の長さ です。

ここぞという小節で長めの韻がバシッと決まっていると印象に残りますよね。多くの方は韻の長さを文字数で数えると思いますが、言葉の「長さ」の基準はそれだけではないのです!

 

■時間的な長さ=モーラ

言葉の長さを時間的に表した単位が「モーラ(拍)」です。無意識にですが、日本語話者は一般的に言葉の長さをこの概念によって測っています。

「ありがとう」

↑この言葉の「長さ」を問われれば、大抵の人は「5文字」と答えると思います。
(私もとりあえずそう答えます)

1文字を発音するのにかかる時間を仮に1拍とすると「ありがとう」という言葉を発音するのには5拍ぶんの時間が必要ということになります。この「」を音韻論上では「モーラ」と呼びます。

とにかく「文字数=拍数=モーラ数」ということです。

 

ありがとう」の長さは時間的に表すと「5モーラ(=5拍)」ということになります。


■音の数=シラブル

言葉の長さを音の数で表した単位が「シラブル(音節)」です。日本人が言葉の長さを文字数で表すように、英語圏では言葉の長さをシラブル数で表します(たぶん!)

 「ありがとう」には「あ」「り」「が」「と」「う」の5文字が含まれていますが

音として分解してみると「ア」「リ」「ガ」「トー」の4音です。

 

「ありがとう」の長さは、音の数で表すと「4シラブル(=4音節)」です。

 

「ー」や「ン」や「ッ」や、その他それ単体で1音とは言えないような音は前後の音に吸収されてひと塊になります。

 私の国語力では上手く説明できないので例を挙げると

  • 「人口」→「ジン」「コー」の2シラブル
  • 「バイト代」→「バイ」「ト」「ダイ」の3シラブル
  • 「勝俣」→「カ」「ツ」「マ」「タ」の4シラブル
  • 「串カ~~~ツ」→「ク」「シ」「カーツ」の3シラブル
  • 「串カツ~~~!」→「ク」「シ」「カ」「ツー」の4シラブル

といったところです。

串カツの叫び方によってシラブルの数が変わるのは最後の「ツ」の発音の違いによるものです。

「串カ~~~ツ!」の「ツ」は消え入るようなウィスパーボイスって感じで、それ単体ではひとつの「音」にならず、直前の「カー」に吸収されるのです。

すみません、何言ってるかわかんないですよね。実際に口に出して言ってみるとなんとなくわかると思います。

 

 

問題

「立体感」と「失敗談」

「取り巻き」と「良し悪し」

どっちの韻の方が長い?

 

 ・拍数でかぞえると前者「り」「っ」「た」「い」「か」「ん」6モーラ

後者は「と」「り」「ま」「き」4モーラ

よって前者の方が長い。

 ・音節数でかぞえると前者は「リッ」「タイ」「カン」3シラブル

後者は「ト」「リ」「マ」「キ」4シラブル

よって後者の方が長い

 答え

音の数と時間的な長さのどちらで数えるかによる!

 

日本語の歌詞を文字数ではなく音節数を基準にして曲に乗せると日本語らしからぬグルーヴ感が生まれます。

最近の日本のトラップ系のラッパーには割りと広まっている技術ですが、このやり方を自力で意識的に突き詰めたのはjinmenusagiなんじゃないかと思ってます。